2014年6月7日土曜日

アメリカで救急車を呼ぶ

ときは1月の終わり、息子が生後8ヶ月になって間もないある日のことだった。いつものように寝かしつけた息子が、どうも寝苦しそうにしている。しきりにモゾモゾするので、落ち着かせようと思っておでこに手を当ててみると、驚くほど熱い。まさかと思いつつ体温を測ってみたところ、102.5F。私は摂氏と華氏の換算ができないので、インターネットで調べると何と40.2C!3時間前までは何ともなかったのに、いきなりこんな高熱が出るなんて!

「定本 育児の百科」を読んでみるに、たぶんこれは突発性発疹なんだろう。突発性発疹は生後6ヶ月から2歳くらいまでのあいだにほとんどの子どもが経験する通過儀礼のようなもので、ある日突然高い熱が出て、熱が引いたあとに発疹が身体じゅうにできるという。病院に行ったところで何かできるわけではないので、全快するまでの1週間程度は自宅で看護するしかないらしい。

それならこのまま様子を見るしかないのか、と思う一方で、私には引っかかることがあった。産後Alta Batesを退院するときに、NICUのスタッフから「赤ちゃんの体温は98F~99Fが標準なので、もし97Fを下回ったり100Fを上回ったりしたときは、すぐに病院に連れて行くように」と言われていたのだった。突発性発疹だろうから自宅安静でいいのか、それとも102.5Fもの熱が出ているから病院に行った方がいいのか、判断に迷う。そんなときに、息子が嘔吐したので慌てる。突発性発疹って嘔吐を伴うものなの?もしかして何か別の病気にかかっているのかな?でも病院と言ったって、午後9時を過ぎていたのでKiwi Pediatricsは閉まっているし、いったいどこに行けばいいの?そんなこんなで慌てているうちに、息子が再び嘔吐。苦しいのか、ずっと泣き続けている。なかばパニックになりながら、仕方がないと覚悟を決めて911に電話した。

アメリカでは警察と救急が同じ電話番号なので、911に電話したときはどちらを呼びたいのかはっきりさせないといけない。「私のベイビーが102.5Fの熱を出して、この1時間以内に2回嘔吐して…」と伝え、住所を教えたところで最後にオペレーターの女性が「あなたはバークレー市に住んでいるのよね?」と尋ねてきたので、「いえ、アルバニー市です(UC villageがあるのはアルバニー市)」と答えると電話が突然どこかに転送された。

次に応対してくれた女性に最初から説明し直したところ、息子の状態についていくつか質問を受けたのだけど、「Is he breathing?(呼吸はしていますか?)」という質問でなぜか頭の中が真っ白になってしまい、「意味がわかりません。ブリージングって何ですか?」とパニックになってしまった。そして電話がまたどこかに転送された。一から説明し直して住所を伝えて、また転送されて、というのを繰り返し、結局7~8回は転送されて、どこの誰と話しているのだかわからないままに、「Is someone coming?」「Yes」というやりとりで電話が終了。電話を切って2分と経たないうちに救急隊員が自宅に到着。

救急隊員は白人男性とアジア人男性の2人だった。「薬は何か飲ませたの?アスピリンを飲ませればいいんだよ」と言われたけれど、素人判断で赤ちゃんに薬なんて飲ませて大丈夫なんだろうか?救急車に乗り、病院に搬送される。救急車に乗って最初にしたことは、息子の保険の確認だった。私はMedi-Calの会員証を提示した。車に乗るからと思ってカーシートを持ってきたのに、息子を座らせようとすると大泣きしてしまったので、担架を起こして私が座り、私の身体を固定したところに息子を抱っこする、という方法で息子を運んだ。

向かったのはChildren's Hospital At Oakland。あとでわかったけれど、自宅から18番のバス1本で来られる場所だった。夜間も患者を受け付けているようで、待合室にはたくさんの赤ちゃんや子どもがいた。ここで息子の名前が呼ばれるのを待つ。

…しかし、30分以上待っても全然呼ばれる気配がない。息子は病院に着いてからずっと泣き続けている。とりあえずオムツを替えようと思い、トイレのオムツ交換台に息子を仰向けに寝かせた瞬間、噴水のようにゴボゴボと大量に嘔吐。泣きたい気持ちで息子を抱え、受付の女性に診察を急いでもらえないかと頼んでみると、Triage Windowに行くようにと言われる。待合室の一角にあるガラス張りの部屋がTriage Windowという部屋で、診察の前に応急処置が必要な患者はこちらに呼ばれるようだった。Triage Windowにいたスタッフに、息子の名前がwaiting listにあることを確認してもらい、ほどなくして呼ばれた。

飲み薬になっているイブプロフェンを口の中に入れた途端に、またしても大量に嘔吐!もう、息子の身体はいったいどうなってしまったんだろう?替えの洋服を持ってきていなかったので入院着をもらって着せ替え、座薬を入れたところで個室に通され、ドクターの診察を待つことに。

個室で待つこと30分以上。看護師さんがやってきて、先ほど息子が嘔吐してしまった飲み薬を再び投与。今度は吐かずに飲むことができた。そこから待つこと1時間、体温の計測があり、すっかり熱が下がっていることが確認できた。息子もすうすうと寝息を立てるようになり、顔には早くも発疹が現れ始めていた。この日は患者の数が多かったそうで、ドクターの診察を受けられたのは翌朝の7時過ぎだったけれど、そのころには息子は元気になっていた。

ところで、救急車を呼んだとなると、気になるのが費用のこと。3ヵ月後の4月末に請求書が届いた。それを見てみると…なんと2264ドル(約23万円)!内訳は夜間呼び出しの1895ドルと、移動距離に応じた金額が369ドル(1マイルあたり45ドルらしい)。Medi-Calが支払いを拒否したので、あなたは100パーセント自己負担することになっている、と書かれていた。救急車を呼んだ時点で覚悟はしていたので致し方ない。金額については予想以上に高い!と思う一方で、Medi-Calのおかげでこれまで息子の医療に関しては1ドル足りとも支払わずにきていたので、このくらい払っても全然足りないくらいだという思いがあった。Medi-Calに加入できたおかげで、超音波検査を含む妊婦検診と分娩費用と6日間の入院費、息子の黄疸治療、産後の母体の検診(Medala社の電動搾乳機のプレゼント付き)と息子の健康診断や予防接種まで、すべて無料で受けてきたから。

しかし請求書には肝心の支払い方法が書かれていなかったので、とりあえず最寄りのアルバニー市役所の分署まで行って質問してみることにした。Fire Departmentに案内されたので、窓口に出てくれた消防士さんに請求書を見せてみると「保険会社が全額拒否するなんておかしい。普通は一部でも負担してくれるものなのに。僕が問い合わせてみるよ」という親切なお返事をいただいた。「私たちの帰国が迫っているので、手続きしていたらきっと間に合わないと思う。全額支払ってもかまわないんだけど」と言っても、「いや、これは保険担当部門にかけあった方がいいよ」と消防士さん。

結論から言うと、息子のMedi-Calは無効になっていたので、救急車代を拒否されてしまったらしい。実は息子がMedi-Calに承認されてから5ヵ月後に、Medi-Calからパンフレットが送られてきて、子どもの保険をAnthem Blue CrossかAlameda Allianceのどちらか選ぶようにという通知がきたので、Kiwi Pediatricsに確認してAlameda Allianceに加入していたのだった。だから、救急車に乗ったときにMedi-CalではなくてAlameda Allianceの会員証を提示すればよかったのだ。私はこのときまで、Medi-Calがすでに無効になっている(担当がAlameda Allianceに移ったというべきか)ということを知らなかったのでびっくり!

それで、救急車代はAlameda Allianceが何と全額負担してくださいましたとさ。カリフォルニア州、すごすぎる!このご恩は一生忘れません!